鳴海クリニック <消化器内科・内科・外科・皮膚科>

クリニックレポート(個別記事)

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皮膚病変と肝臓
NO.106 2004/10/15

 皮膚は内臓の鏡とされています。人体の表面を覆う器官としての皮膚は、内外からの刺激に順応して防御的に反応し、生理的、病的の如何を問わず、常に全身からの影響を受けつつ変動しています。
 一方、肝臓は体重の約1/50を占め、1,2~1,7kgの人体の臓器としては一番大きなものです。また、肝臓は全身の代謝の中心であり、数多くの代謝に関する機能をもっている以上、肝臓に異常があれば、当然のことながら全身の代謝に異常が現れます。
 皮膚の異常は、肝臓の代謝異常を臨床的に診断する最もよい症状です。肝障害時には次の図に示されように、色々な病変がみられます。この図は1982年に発行された、谷奥喜平監修の『皮膚と全身』から引用したものです。

 さて、肝障害に伴う皮膚疾患を、以下に述べますように、①肝疾患が原因で二次的に皮膚病変が生じる場合、②系統的疾患の部分症として肝臓と皮膚が同時に侵される場合、③皮膚疾患が原因で二次的に肝障害が生じる場合の3群に分類することが出来ます。




1.肝疾患(肝障害)が原因で二次的に皮膚病変が生じる場合

1)色素沈着:
* 黄疸は肝疾患に特有の色素沈着ですが、黄疸の原因、強さにより、色調はさまざまです。一般に急性肝炎では鮮やかな黄色であり、閉塞性黄疸では強い黄色、肝硬変では暗い黄色一応区別されますが、経過により変化します。
 血中ビリルビン値が上昇しますと眼瞼結膜・強膜が黄色くなり(通常ビリルビン濃度が2mg/dl以上のとき)、次いで皮膚が黄色くなり、明らかな黄疸になります。
 直接ビリルビンの比率の差により、あるいは他の色素沈着との合併により、異なった色調をとります。
* 一方、慢性の肝不全でびまん性の褐色色素沈着が生じますが、これは表皮基底層のメラニンの増加によるものですが、真皮内に胆汁色素の沈着も加わって複雑な色調を呈するものです。
* 晩発性皮膚ポルフィリン症;中年、老人でアルコール性あるいは薬剤性の慢性肝障害に伴って、ポルフィリン代謝障害を起こし、ポルフィリン代謝異常があると光線に敏感な皮膚となり、顔面、手背などの日光露出部位に水疱、びらん、瘢痕についで色素沈着、多毛がみられます。
* ヘモクロマトージスではびまん性の色素沈着がみられますが、表皮基底層のメラニン色素の増加と真皮内のヘモジデリン沈着、並びに胆汁色素の沈着のため、複雑な色調を呈します。なおへモクロマト‐ジスにつきましてはまた後で述べます。
* Wilson病は常染色体劣性遺伝の銅代謝異常で、胆汁への銅の排泄障害が病気の本態です。肝臓への銅沈着に引き続き脳、腎、角膜など銅沈着による障害を起こしますが、皮膚でも表皮基底層のメラニンの増加に真皮内の銅の沈着が加わります。

2)皮膚掻痒症とこれに続発する湿疹及び痒疹:
 黄疸に先立って痒みを訴えます。血中總胆汁酸が増加すると痒みが生じますが、原因が不明の痒みもしばしばみられます。頑固な痒みのために二次的に湿疹化し、あるいは痒疹が生じることもあります。

3)黄色腫:
 胆道閉塞(閉塞性黄疸)によって高コレステロール血症が起こり、黄色腫がを生ずることがあります。リポ蛋白の出現によるものですが、その種類によって結節性、丘疹発疹型、扁平、眼瞼黄色腫など、症状は多彩です。

4)血管性変化: 
 皮膚の血管性変化として最も特徴的なものは、くも状血管腫で、肝硬変の約60%に認めるとされています。その他、紙幣状皮膚、手掌紅斑(red palm)が認める場合が多いようです。肝障害に伴って門脈が圧迫または閉塞し、門脈圧の亢進に伴って、腹壁静脈が副行路となり、それが怒張してメヅサ冠をつくります。

5)爪・毛の変化:
 貧血、低酸素血を反映し、また肝硬変に伴う低アルブミン血症により、爪は蒼白になり、ばち状爪となり、爪の新生部が陥凹して時計皿の形をとります。
 また、肝障害によってエストロゲンなどの女性ホルモンの不活性化が障害され、循環エストロゲンが増加し、男性の女性型乳房、胸毛、腋毛、陰毛の脱落、陰毛の女性型発毛がみられます。

6)口腔粘膜の異常:
 舌表面は滑らかで舌乳頭が萎縮し、苺様に紅くなります。

※ ヘモクロマトージス
 鉄が肝臓、膵臓、皮膚などの実質臓器に過剰に沈着することによって生ずるもので、肝硬変、糖尿病、皮膚の色素沈着が3大徴候です。血清鉄の上昇、不飽和鉄結合能(UIBC)の低下が診断の決め手になります。

※ ポルフィリン症
 ポルフィリン症は、ヘム生合成経路における7つの酵素の低下または欠損が原因となり、多様な症状を呈する先天的もしくは後天的な代謝異常症です。
 中年、老人でアルコール性あるいは薬剤性の慢性肝障害をおこし、顔面、手背などの日光露出部位に水疱、びらん、瘢痕、色素沈着、多毛をみるもので、尿に赤色光がみられますが、ウロポルフィリンの排泄によるものです。

※ B型肝炎ウイルス感染に関係する疾患
 Gianotti病、血清病様症候群、結節性動脈周囲炎、クリオグロブリン血症、扁平苔癬、慢性蕁麻疹など。

※ C型肝炎ウイルス感染に関係する疾患
 扁平苔癬、慢性蕁麻疹など、前述のB型肝炎感染の場合と似た皮膚疾患が近年報告されています。

2.系統的疾患の部分症として肝臓と皮膚が同時に侵される場合

1)薬物中毒、薬疹:
 高度の薬疹、とくに過敏症候群hypersensitivity syndromeの際に強い肝障害を伴
います。なお、治療のために薬剤を投与する際も、肝機能を定期的に検査する必要があります。

2)感染症:
 ウイルス性発疹症(麻疹、風疹など)、水痘などの成人罹患重症例でしばしば肝障害が合併します。その他、種々の細菌感染症にも肝機能検査を欠かすことはできません。

3)自己免疫疾患:
 原発性胆汁性肝硬変の場合は勿論ですが、SIE、強皮症などでも、全身症状の一環として肝臓と皮膚が侵されることがあります。

4)悪性腫瘍:
 肝転位は種々の悪性腫瘍の進行期に稀ならずみられます。

3.皮膚疾患が原因で二次的に肝障害が生じる場合

1)広範囲の皮膚の炎症を伴う種々の疾患:
 紅皮症、汎発性乾癬、広範囲熱傷、汎発性湿疹など、皮膚が広範囲に侵される場合、肝障害がしばしば合併します。

2)皮膚の悪性腫瘍:
 菌状息肉腫のような皮膚原発のリンパ腫も病期の進行とともに内臓臓器への侵襲が始まります。また、悪性黒色腫の場合、内臓諸臓器への転位の頻度は高いものです。

その他、肝機能と皮膚との関係

※ アトピー性皮膚炎と肝機能
 アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の子どもの中に、肝機能の悪い患者がいることは、10年ほど前から指摘されており、とくにGOTの値がアトピーでない子どもより明らかに高い傾向がみられることが確認されています。

※ LDHと皮膚病変
 生化学検査において乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase:LDH)活性を知ることは重要です。通常、一般肝機能検査に異常値を認めることは少ないのですが、LDH値の高値を認めることは少なくありません。とくに湿疹が全身に拡大している症例では、LDH高値を示す傾向があります。
 一部のLDHは皮膚でつくられますが、皮膚病変の波及の程度に比例して皮膚でつくられたLDHが血液中に放出され、血液中のLDHが高値を示してくるとが考えられます。
 そのため、血清中のLDH値は湿疹病変の広がり具合をしる上で非常によい指標になると言われています。
 しかし、この検査値はアトピー性皮膚炎に特異な検査成績ではなく、原因の如何を問わず、湿疹病変であればその拡大程度を測定する指標になるということです。

※ 副作用チェックの問題
 皮膚疾患の治療の際、投与する薬に応じて副作用をチェックしながら経過をみることがしばしばですが、この場合肝機能検査が大切な項目になります。この中で、わたしはとくにGOT、GPT、γGTPを大切な項目に入れております。

 以上のように、肝機能障害の結果生じた異常代謝産物が皮膚に作用し、または沈着し、皮膚血管を侵襲して病変を引き起こすことになりますが、その障害が軽微で、ただちに皮膚変化を引き起こさないとしても、皮膚疾患の発症を助長し、治癒を長びかせる一因となりますので、皮膚疾患を治療するに当りましては、とくに留意しなければなりません。

 
 参考資料
1.谷奥喜平監修:皮膚と全身 -プライマリ・ケアと皮膚科-1982年発行 
2.現代皮膚科学大系 第2巻c(全身と皮膚Ⅲ)1984年発行 
3.図解 内臓疾患と皮膚(堀 嘉昭著:企画・製作 田辺製薬)1993年発行 
4.標準皮膚科学 第5版(編集:池田重雄・荒田次郎・西川武二)1997年発行 
5.今日の皮膚疾患・治療指針 第3版(肝疾患と皮膚病変)2002年発行 
6.皮膚病診療(特集・肝臓と皮膚)2004年10月発行

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