鳴海クリニック <消化器内科・内科・外科・皮膚科>

クリニックレポート(個別記事)

  • HOME »
  • クリニックレポート(個別記事)
表皮を中心とした最近の免疫組織学的研究より
NO.132 2005/9/12

 皮膚は、表皮、真皮、皮下組織からなる臓器で人体を保護していますが、中でも表皮は人体の最外層にあって、外界からの刺激に対して最初に反応が起こる部位です。
 この表皮の主たる構成細胞はケラチノサイト(角化細胞)ですが、以前は単に角質層をつくるだけの働きしかないものと考えられていました。
 しかし、近年の遺伝子工学的手法を用いた研究で、表皮は単に体表を覆っているだけでなく、免疫組織でもあることがわかってきました。

 すでにこのホームページのNo.120ランゲルハンス細胞について(2005/5/15)お話しましたように、表皮に存在するランゲルハンス細胞がその主役ですが、ケラチノサイトも免疫担当細胞であり、種々のサイトカイン、ケモカインを産生していることがわかっています。
 このように、表皮は外界の刺激に反応して多くのサイトカインを多種多量に産生分泌し、表皮の増殖、再生、炎症細胞の招集・動員、免疫の活性化に司令を発していることがわかってきました。免疫組織であるケラチノサイトは皮膚に加わるさまざまな刺激に反応し、その情報を皮膚の内部に伝える重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。
 ケラチノサイトから放出されたサイトカインは、皮膚外部から刺激が加わっていることを、情報として皮膚の内部に伝えます。すると、表皮のすぐ下の真皮に縦横に走っている血管の内皮細胞に作用し、それが活性化されて炎症を起こすようになります。

サイトカインとケモカイン

 サイトカインとは、細胞によって合成されたペプチドで、それに対するレセプターをもつ細胞に作用し、その細胞の増殖や分化、機能発現を誘発するものです。
 ケモカインは白血球の遊走と活性化に関わっているサイトカインであり、約40種が同定されています。
 次に三重医大・水谷教授の資料を参考にして、皮膚が産生するサイトカインとサイトカインの機能別分類を揚げてみました。






体液性免疫と細胞免疫
 獲得免疫の段階で活躍するリンパ球に「B細胞」と「T細胞」と2種類ありますが、B細胞は抗原を認識してこれと結合し、分裂・分化して最終的に「抗体」を産生します。この抗体による免疫を「体液性免疫」といっています。
 一方、T細胞は、抗原と反応すると分裂・分化して「エフェクターT細胞」というリンパ球になりますが、これはウイルスに感染した細胞に結合して、その細胞を破壊する「キラーT細胞」と、B細胞による抗体の産生を促進する物質を作る「ヘルパーT細胞」の2種類に大別され、このうちのキラーT細胞による免疫をとくに「細胞免疫」といっています。

Th1細胞とTh2細胞
 ヘルパーT細胞は、抗原標示細胞の表面に現れた抗原の断片と結合して活性化し、抗体の産生を促進する物質を作り出しますが、このヘルパーT細胞に「Th1細胞」と「Th2細胞」の2種類があり、どのような物質(サイトカイン)を産生するかによって、その働きが異なります。
 Th1細胞は抗原標示細胞と共同して、抗体などの異物がある場所にマクロファージを呼び寄せる働きを持った物質を産生します。また、Th1細胞は「インターフェロンγ」という物質も出し、これにはマクロファージを活性化する働きがあり、B細胞にIgG抗体を産生するよう命令を出す働きもありますが、その一方でIgE抗体の産生を抑制する働きを持っています。ちなみに、ツベルクリン反応で皮膚が赤くなるのはこのTh1細胞の働きによるものです。
 Th2細胞は、B細胞にIgE抗体を産生するよう命令を出す働きをもった「インターロイキン4」という物質やTh1細胞の増殖を抑える物質などを産生します。

 関節リウマチなどはTh1病、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などはTh2病と考えられ、 Th1/Th2細胞のバランスが病態の成立、進行、予後に深く関与しており、アレルギー疾患はTh2優位と考えられ、事実、局所に集積するリンパ球のサイトカイン産生パターンはTh2と一致していることが示されています。

皮膚疾患との関係

※ アトピー性皮膚炎を中心に
 既にこのホームページのNo.81アトピー性皮膚炎とサイトカイン(2004/1/11)でお話しましたが、代表的な皮膚アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎(AD)の病態に、様々なケモカインの関与が最近明らかにされています。
 特にTh2ケモカインであるTARC、MDCの関与が注目されていますが、 今後、血清TARC値などがADの診断と病勢のマーカーとして日常臨床に応用されることが期待され、血漿ヒスタミン値、Th2ケモカインであるTARCがアトピー性皮膚炎の重症度と相関するとの報告があります。
 また、アトピー性皮膚炎では各種パラメーター(IgE、LDH、IL-6、TARC)に推移がみられ、血漿中のNGF量、SP量が重症度を示すマーカーになり得るとされています。

※ 塩酸エピナスチンが乾癬にも効く理由
 尋常性乾癬はTh1病の代表疾患であり、Th2の集積、つまりアレルギーに関わる反応とは相反するものと考えられています。
 そこで、T細胞に対するケラチノサイト由来のケモカインに着目し、塩酸エピナスチンの影響を検討した結果、塩酸エピナスチンは培養ケラチノサイトのTh1ケモカイン産生、免疫担当細胞表面分子の発現を抑制することが明らかとなりました。
 塩酸エピナスチンはTh1細胞が表皮に向かって遊走し、活性化するのを抑制することが可能であり、同薬は尋常性乾癬においてTh1細胞の浸潤という乾癬の病態そのものを抑える効果が期待できます。

※ ドライスキンのかゆみ発現のメカニズム



 ドライスキンは皮膚の乾燥と同時にバリア機構の破綻を伴っています。このような状態の皮膚に外部から機械的、物理的、化学的刺激が作用すると、ケラチノサイトは直接活性化され、NGFやIL(interleukin)‐1、TNF(tumor necrosis factor)などのサイトカイン、ヒスタミンなどを合成、遊離するに至ると考えられています。

 ケラチノサイト特に基底細胞から放出されたNGFは表皮真皮境界部に分布しているC線維神経終末に作用、神経線維の表皮内侵入を誘導するものとされています。刺激によりケラチノサイトから遊離したIL-1、TNFαのような炎症性サイトカインは神経末梢から分離されたSPと共に神経原性炎症炎症を惹起してかゆみを誘発します。

 また、刺激によりケラチノサイトや肥満細胞から放出・遊離されたヒスタミンは表皮内あるいは真皮に分布している知覚神経線維(C線維)のH1-receptor(H1R)に結合、生じた活動電位は神経分岐部で中枢と末梢の2方向に伝達されます。末梢方向に伝達された活動電位は神経末端からSPやCGRP(carcitonine gene related peptide)を放出することになり、遊離したSPは神経線維や肥満細胞膜上NK1-receptor (NK1R)に結合、前者は神経を直接興奮させ、かゆみを誘発します。後者は肥満細胞に脱顆粒を誘発し、ヒスタミンやtryptase、chymaseなどのproteinase を放出させ神経線維を活性化することになります。

 一方、神経線維を上行した活性電位は脊髄→脊髄視床路→視床→大脳皮質に達し、かゆみ感覚を惹起するようになります。

 また、バリア機構の破綻したドライスキンでは、外的刺激が角層直下にまで侵入している知覚神経線維(C線維)を直接刺激し、生じた活動電位が同様に中枢と末梢に伝達され、かゆみが惹起されるものと思われます。

 外的刺激により神経線維が直接刺激される場合には、ヒスタミンなどのchemical mediator を介さずに神経線維に活動電位が生じることになります。
 従って、このような機序により生じたかゆみには抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は奏効しないことになります。
 ドライスキンを呈す場合のかゆみに抗ヒスタミン薬は無効で、保湿剤などの外用が奏効するということは、ドライスキンのかゆみが神経線維の直接刺激により生じていることを示唆しているものと思う次第です。

以上、高森 建二「ドライスキンとかゆみ」・・・ アレルギー・免疫 Vol.10, No.5, 2003より

クリニック情報

[診療時間]
9:00~13:00
15:00~18:00
休診日/木曜日・日曜日・祝日

[住所]
〒874-0943
大分県別府市楠町14-8

[TEL]
0977-23-5841

初診ネット受付

インターネットから初診に関する事前受付のお申し込みができます。

人間ドック
JN全身シャンプー

院長アーカイブ

皆様のご参考になればと思い、資料を掲載いたします。(PDFファイル)
便秘について
大腸がん早期発見のために

名誉院長アーカイブ

PAGETOP
Copyright © All Rights Reserved.