アトピー性皮膚炎は完治できるか
NO.103 2004/8/30

 既にこのホームページで『アトピー性皮膚炎を治すために(機法吻供法戞悒▲肇圈疾皮膚炎と、わたしの処方』と題してお話しましたが、一体アトピー性皮膚炎は完全に治癒させることができるものでしょうか。この問題について、もう一度お話してみたいと思います

 この問題について、深く検討された上での見解は今のところないようです。
 ただ、東京女子医大の川島教授は次のように述べています。
 「その原因をすべて取り除くことは現代に生きている以上、不可能です。とすれば、アトピーからの完全な脱却(完治)を目指すのではなく、糖尿病や高血圧などの病気と同じように考えて、日常生活にあまり差し障りのない状態にたもつことを最終の目的に考えて、必要な治療を十分に行ってゆくことです」と。

 また、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2004改訂版によりますと、治療の目標について次のように書かれています。
 治療の目標は患者を次のような状態に到達させることにある。
1)症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない。
2)軽微ないし経度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで、悪化しても遷延することはない。

治癒の判定について

 皮膚科医として既に50年が過ぎた78歳の現在、今なお100人以上の患者さんの診療に当っていますが、これまでの経験をもとに、この問題についてお答えしたいと思います。
 このホームページのNo.74「アトピー性皮膚炎と、わたしの処方」(2003/11/2)において、わたしは治癒の判定に関して次のように述べました。
 上述の方法で治療を行いますが、ただ悪い時だけ治療するのではなく、症状を細かく観察し、とくにIgEの推移を参考にしながらその全体像を把握し、次の治療方針に従ってきめ細かく治療をすることが大切です。即ち

治療のポイント
*非特異的減感作療法を併用しながら抗アレルギー剤を上手に使い、アレルギーを薄くするように努める。
* 皮膚バリアー機能低下の是正にもピントを合わせた合理的な外用療法が必要。
 期待される薬理・薬効作用をもつ主剤の選択と、それに適した、更に皮膚症状をコントロールするにふさわしい基剤を選択する。
 そして、年齢的な推移、季節的な推移を考慮に入れて治療修了の時期を定め、その後観察期間をおいて再発の有無を確め、最後に治癒の判断をくだすことになりますが、次にそのポイントを示します。

治癒判断のポイント
*まず、年齢的な推移を参考にして判断します。
*3歳までに治る人が多いので、なるべく3歳頃までに治すように努めること。 
*3歳までに治らなければ、思春期までに治すように努める。 大体15〜16歳頃までに治る場合が多いようです。
*一般に夏はよく、冬に悪くなる傾向があります。
*大人になっても治らない場合は、中々治癒させることは困難ですが、まず上記の治療で1年間経過をみた上で決めます。
*なお、上述のように、IgE抗体の総量が治療によって低下することが多いので、その推移を参考にして判断します。
*しかし、治癒の判断は、あくまでも医師にまかせることが大切で、自分勝手に判断して、いいからといって治療を止め、悪い時のみ治療するようでは、何時までたっても治りません。

症例提示
 
 次に2つの症例を挙げてみましょう。
 1つは完治したと思われる症例で、極めて忠実に2週間に1回の受診を繰り返し、5年間の治療で高かったIgEも正常範囲に安定し、治療を中止して1年を経過しても臨床的に治癒と判断された症例です。 
 
 いま1つは、不規則な治療ながら、約6年の治療経過でかなり症状は軽快しましたが、IgEの値がまだかなり高いことを示す症例です。

 以上の症例よりわかりますように、当クリニックの診療方針に従って規則正しい治療を受けておられれば、完治することもあり得るということがお分りいただけたと思います。







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