保湿剤を如何に使うか
NO.112 2005/1/15

 すでにこのホームページのNo.10 肌あれを防ぐ(機(2001/10/3 ),及びNo.88 皮膚病変に応じた外用療法(機(2004/3/21) 、No.108 保湿のスキンケア( 2004/11/15) で保湿剤のことについて既にお話しましたが、今回はこれらをまとめて、保湿剤使用の実際についてお話してみたいと思います。

最近の保湿剤と、その特徴

1.尿素軟膏
 尿素を10〜20%含有するクリーム(ウレパール、ケラチナミン、パスタロン)
角質の水分保持増加作用
角質の溶解剥離作用
 これはとくに20%含有クリームについて言えるもので、肥厚している角質層を菲薄化し、角化皮膚をしっとりさせ、皮膚を正常化することにあります。

2.ヒルドイド軟膏
 酸性ムコ多糖類の一種であるヘパリノイド(へパリン類似物質)を有効成分とする血行促進・皮膚保湿剤(クリーム)
皮膚角層の水分含有量を増加させ、水分の保持能を高める(尿素軟膏に比べ高い保湿能を示す)
良好な経皮吸収を示す(経皮的に皮内から皮下へと浸透したへパリン類似物質は、最終的に血管壁を経て血行に入るか、あるいはリンパ行性に吸収されるので、水分の保持、体液や電解質の交換に重要な役割を果たし、ガス交換、酸素の供給、組織の栄養にあずかる)
血流量増加作用を示す
 したがって、この ↓◆↓により皮膚の栄養条件をよくすることになりますから、本当の栄養クリームとしてのはたらきが期待されます。

使い方の実際

尿素軟膏の場合

 一般に指掌、足底の皮膚の角化が著しい場合、とくに角質増殖型の「みずむし」の場合、先ず尿素軟膏を先に塗って、その上から例えばハイアラージン軟膏を塗り添えることを繰り返し、治療しています。爪の「みずむし」の場合はハイアラージン液を筆でよく染み込ませるように塗り、その上から尿素軟膏を塗りこむようにしています。

ヒルドイド軟膏の場合

 その他の場合は殆んどヒルドイド軟膏を使いますが、それは上述のような作用機序から、とくにヒルドイドに注目するからです。

 その使用範囲は非常に多岐にわたりますが、これに関しましてはこのホームページのNo.32 中高年の「しみ」に対するヒルドイド軟膏の効果(2002/3/13) 及びNo.55 中高年者のスキンケアとメークアップ(2002/10/15)をご参照下さい。
 刺激症状は尿素軟膏に比べれば少ないようですが、使い方を誤まってはいけません。
 このホームページのNo.12 皮膚の栄養(2001/10/17)のところでお話しましたように、皮膚の真皮では、繊維と繊維の間には隙間があり、この隙間には基質といって水分をはじめ電解質やタンパク質、炭水化物のような皮膚の新陳代謝に必要な成分が半ばゼリー状の液体としてつまっています。 この中の代表的な成分である酸性ムコ多糖類としてヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、へパリンなどがあげられます。
 このなかで ヒアルロン酸は保湿力が極めて強力で、乳幼児の真皮に豊富に含まれています。 しかし、加齢と共に減少しますので、次第に張りのない、たるんだ皮膚になります。
 また、 分子量が大きいために外用では吸収されず、塗布によって真皮のヒアルロン酸を増加させることは出来ません。
 ところが、へパリン類似物質は吸収されて真皮基質の成分にあずかり、そのうえ血行をよくするという、理論的にも真の意味での栄養クリームとしての働きを発揮することになりますから、効果も優れています。

使い方の具体例: 手の慢性湿疹症状に対して
 先ずヒルドイドソフトを全体に塗り、その上からとくに悪いところにジフラール軟膏を塗り、更に亀裂のあるところにはリバボチ(リバノール・硼酸亜鉛華軟膏)を貼っておく。

保湿剤使用に際しての注意

 乾燥してクリーム基剤を使用してもよいと思われる症例に保湿クリームを使い、時に刺激症状を訴えることがありますが、注意しなければなりません。
 これは、一見乾燥しているようにみえても、実のところ、ある程度発赤が認められ、炎症症状がまだ残っておりますので、この状態で乳剤性基剤の軟膏を使いますと、水分は吸い上げられず、逆吸収されて刺激症状が起こることになります。
 したがって、このような場合には、まず油性軟膏,または水溶性軟膏基剤のものを使い、炎症症状が全く治まった段階で乳剤性基剤のものに切り替えます。保湿クリームなどもこの段階で使用すれば問題はありません。

 アトピー性皮膚炎の場合、なるほど表面はかさかさしていますが、よく見ると赤味があり、触ると多少浸潤があり、炎症症状がまだ残っています。このような場合に保湿剤を使うと症状はむしろ悪化します。
 このような症例が比較的多いので、注意しなければなりません。

 また、よくステロイド軟膏(油性基剤)とヒルドイド軟膏(乳剤性基剤)を混ぜて使うケースが多いようですが、この場合時間がたつにつれて水分が蒸発して基剤の性質が変化し、使用に際して最適の条件ではなくなります。また、乳剤性基剤は混合により乳化が破壊され、薬物の透過性が変化するとされています。

 従って混合に際し、実際に処方されている組み合わせの多くは、ステロイドの濃度は希釈されるものの、ステロイドの透過性が高まると考えられるものが多く、逆に、副作用が増加する可能性があることが認められています。

 やはり軟膏の使用条件は、製造時におけるものが最適と思われます。

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