皮膚科診療の新生面
NO.123 2005/6/30

 皮膚病変を診るにあたって大切なことは、病変の局所だけでなく、全身的な背景を考えて色々な角度から見ることです。 そうすると、そのうち自ずと病変の治りにくい謎もとけ、一層病気が治りやすくなることを経験します。

とくに湿疹様病変を治すにあたって

 先ず問診を詳しく聞いて、その答から問題点を考え、必要な検査をし、病状を把握しなければなりません。
1)アレルギーの「すじ」を探す。
2)自律神経失調の有無を探す。
3)現在、他科で治療を受けている場合はその内容を把握する(病名と薬について)
4)その他、特に問題となる合併症(糖尿病、透析の如何)を探る。
 その上で結果を纏めてみますと、次のような場合が一応考えられます。
顱縫▲譽襯ーがある場合
髻房律神経失調症がある場合
鵝縫▲譽襯ーがあって自律神経失調症もある場合
堯縫▲譽襯ーも自律神経失調症もない場合
 そこで、先ず以上の4つを考え、それぞれに従って治療方針を立てることにしております。

アレルギーの有無と神経とのかかわりを考える

 皮膚と神経との関係につきましては、本ホームページのNo.70 皮膚と自律神経(2003/10/5)、No.107 ストレスと皮膚(2004/10/30)、No.118 かゆみとその対策〜新しい見地から(2005/4/15)、No.120 ランゲルハンス細胞について(2005/5/15)、No.122 皮膚のアレルギー性炎症と神経とのかかわり(2005/6/15) 等々色々お話してきました。
 そして、アレルギー疾患の発症には、本来のアレルギー性炎症に非アドレナリン非コリン性の神経線維から遊離するタキキニンなどの神経ペプチドが引き起こす神経原性炎症が加わり、一層病変が修飾されるということを強調しました。

 それで、皮膚疾患、とくに湿疹様皮膚病変の治療に際しましては、下記のようにアレルギーの有無と神経とのかかわりを考えて治療をする必要があると考える次第です。
1)アレルギーの有無を確認し、アレルギー陽性の場合はその程度を把握する。
2)自律神経失調の有無を確める。
 このことに関しましては次の項で説明したいと思います。

わたしの主張する低血圧症候群について
             自律神経失調のありふれた一連の症状
  

 これは問診表にて大体推察できますが、これから述べますことはすべて女性で、割に痩せ型の人に多く、肩凝りや、時にめまいを訴えて疲れやすいと言う人がいます。
 多くの場合冷え性で、便秘がちで、ひどい時は生理不順を訴えたりします。そして一般に血圧は低く、私はこれを低血圧症候群と呼んでいますが、自律神経の不安定な人であることがわかります。

 わたしはこれを自律神経障害(または,自律神経の緊張異状)の皮膚表現と考えて、日常診療に役立てていますが、上述のように、生理との関係もあり、ひどいときには生理不順を訴えるなど、内分泌との関連も考えられます。
 そして、先のホームページでも述べましたように、「敏感肌の発生メカニズム」の有力な根拠と考えております。

 また、非常に汗かきの人、とくに精神性多汗症(手のひら,足のうらによく汗をかく人)も皮膚に表われる自律神経障害の一つの症状で、これもその緊張異状によるものです。

 皮膚の表面を先の丸い棒でこすりますと、普通の場合、まず赤くなり、暫くすると赤みが消え、またもとに戻りますが、これを皮膚描記症といっています。
 皮膚が敏感な人では、はじめの赤みがだんだん強くなり、痒みをともなってそのうちこれが盛り上がってきます。これを紅色皮膚描記症陽性と言って、慢性蕁麻疹の診断によく用いられる検査法です。
 ところが、アトピーの人では、最初の赤みが出ないで、逆に白くなることが多く、これを白色皮膚描記症と言っています。何れも皮膚表面の血管の異常反応によるものですが、何故このようなことが起こるかが問題になります。

アレルギー性皮膚疾患の治療に必要な三位一体の概念

 前回のホームページで、「皮膚のアレルギー性炎症と神経とのかかわり」についてお話しましたが、その後次のようなことがわかってきました。

 いま、慢性蕁麻疹の症例5人についてみますと、下記の表のように何れも女性で、アレルギーの程度は様々ですが、中にはアレルギーを証明出来ないものもありました。
 そして、これは大なり小なりの低血圧症状を伴い、その中の4例に生理不順や月経前悪化を伴っていることがわかりました。
 また、アトピー性皮膚炎の10例の患者さんについてみますと、いずれも女性ですが、下記の表のようにその程度に強弱はありますが、すべてアレルギーを有し、10人ともに低血圧症候群を合併していることがわかりました。そして、その中の3症例は生理の前に悪化するなど、更に内分泌との関係を思わせる症例でした。

 そこで、これらを総合しますと、アレルギー性皮膚疾患、とくに慢性蕁麻疹などの治療に際しましては、アレルギーに対する処置は勿論ですが、場合によっては神経とくに自律神経並びに内分泌の影響を併せて考えた、いわゆる三位一体の概念に則った治療が必要と思われます。
 この場合、アレルギーと神経との関係につきましては、前回のNo.122 皮膚のアレルギー性炎症と神経とのかかわり(2005/6/15)のところで詳しく述べておきましたし、これに関する治療上の得策として、最近開発された塩酸オロパタジン製剤(アレロック)の応用について、既にNo.118 かゆみとその対策〜新しい見地(2005/4/15)のところで解説しておきました。
 また、上述のように、内分泌との関連も考えられる場合は、これも既に述べましたように、プレグナンジオールの有用性・No.114 (2005/2/15) のところをご参照ください。







 これは先日、協和発酵・医薬研究センター・主席研究員大森健守氏との話し合いの中からヒントが得られたもので、現在このことを常に年頭に入れて毎日の診療にあたっている次第です。

Back