最近の研究と抗アレルギー薬の新しい使い方
NO.131 2005/9/5

 既に、このホームページのNo.29抗アレルギー剤・使い方のポイント(2002/2/20)、No.90抗アレルギー薬と、使い方の実際(2004/4/11)、及びNo.104当クリニックにおける抗アレルギー薬使用の実際(2004/9/15)において、皮膚科領域におけるアレルギー薬の使い方、とくに当クリニックにおける使い方の実際について述べましたが、最近、とくに進歩の著しい神経生理学的な面及び免疫学的側面より、再び抗アレルギー薬の使い方を考えてみました。

かゆみ発症メカニズム解明の新しい展開

 近年、神経生理学的側面からのアプローチは、かゆみの研究に大きな進歩をもたらしていますが、富山医科薬科大学講師の豊田雅彦先生は、アトピー性皮膚炎における神経関連因子のかゆみへの関与について、新たな起痒因子の探索とかゆみの発症メカニズムの解明に取り組んでいます。

 それによりますと、アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、末梢の知覚・交感神経の生存、分化、機能発現に重要な役割を果たす神経成長因子(Nerve growth factor:NGF)や神経ペプチドの1つであるサブスタンスP(Substance P:SP)を含有するマスト細胞が増加しているとしています。

 そして、下図に示すように、皮膚におけるNGFの主要産生源は表皮角化細胞(ケラチノサイト)であり、掻破などの刺激により惹起される軸策反射により、表皮内においても神経末端およびマスト細胞よりSPが遊離され、NGFは表皮内への知覚神経線維の伸展を促すのみならず、マスト細胞の活性化を誘導し、かゆみの増強を引き起こすことが考えられています。




再び、塩酸オロパタジンの作用を考える

 わたしは先に、このホームページのNo.118 かゆみとその対策〜新しい見地から(2005/4/15)と題してお話しましたが、その際、皮膚と神経ペプチド、とくにサブスタンスPのことに触れ、最近開発された塩酸オロパタジン製剤(アレロック)には従来の抗アレルギー作用(ヒスタミンH1受容体拮抗作用、ヒスタミン遊離抑制作用)の他に、サブスタンスP遊離抑制作用のあることに触れ、アトピー性皮膚炎を中心とした「かゆみ」対策の有用性について強調しました。

 また、このようなサブスタンスP遊離抑制作用は、末梢知覚神経C線維に働くことから、「かゆみ」のみでなく、痛みへの効果も期待されます。

 従って、各種疾患の「かゆみ」対策のみならず、帯状疱疹の神経痛の軽減や、一般にストレスに弱い患者の治療にも応用されることが充分考えられます。

皮膚神経系に対する塩酸エピナスチンの効果

 ところが、その後、塩酸エピナスチン(アレジオン)がNGFの上昇を抑制し、同時にサブスタンスPも有意に抑制することがわかり、かゆみ対策に更なる伸展が期待されるということがわかりました。
 これを次にまとめて見ますと、

1)塩酸エピナスチンはNGFの上昇を抑制し、同時にサブスタンスPも有意に抑制する。
2)塩酸エピナスチンは培養ケラチノサイトのTh1ケモカイン産生、免疫担当細胞表面分子の発現を抑制する。
3)塩酸エピナスチンは抗アレルギー薬であり、Th2媒介性疾患に奏効するわけですが、皮膚Th1病にも効果を発揮するとされています。

 即ち、塩酸エピナスチンはTh1細胞が表皮に向かって遊走し、活性化するのを抑制するとされていますので、Th1細胞の浸潤を特徴とする尋常性乾癬の病態そのものを抑えるという効果が期待できます。
 以上、小林 美和、戸倉 新樹両氏の論文「アレルギーの臨床25(10),2005」より

当クリニックにおける抗アレルギー薬の新しい使い方

 以上のことより、抗アレルギー薬の使い方を色々検討して、次のような新しいモデルを考えてみました。
 これでお分かりのように、例えば慢性蕁麻疹に治療に際して、まずアタラックスの投与から始まりますが、非特異的減感作療法の併用と共に、少なくとも一週間の経過をみながら矢印のように処方を変えて効果を判定し、症状を軽減することに努めます。アタラックスによって眠気がひどく、翌日まで体がだるいとか、色々訴えの多い人は、例えばニポラジンに変えるとか、色々検討しながら経過をみることにしています。




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