円形脱毛症における発生メカニズム展望
NO.137 2005/11/10

 円形脱毛症は、最近では、成長期毛器官が何らかの自己抗原に対してリンパ球を中心とした免疫反応を起こし、毛根がリンパ球によって攻撃され、障害された結果、成長期毛器官は萎縮した毛を作り、ついには退行して、毛が脱落するとみなされています。
 このリンパ球による自己免疫反応が本症の主要な病変と考えられているわけですが、退行期〜休止期の毛根部にはこのようなリンパ球浸潤はみられません。

 このように、進行する脱毛症では、成長期毛根部周囲や外毛根鞘、毛球部内に多数のリンパ球が侵入していますが、免疫学的に、このリンパ球は殆どがT細胞で、ヘルパーT細胞が多く、毛根の細胞を攻撃していることが判っています。
 このため、毛根は、退行期〜休止期の状態になってしまい、何年も伸び続けるはずの毛の伸びが止まり、脱落してしまうのです。

 組織学的には、毛包周囲、毛包内、血管周囲にリンパ球を主とした炎症性細胞浸潤がみられ、同時に肥満細胞の浸潤もみられます。また、電顕的に、毛母細胞、毛乳頭細胞、メラノサイトなどの変性などがみられます。
 ただ、このような変化はメラニンをもった毛母細胞に起こりやすく、白髪には起こりにくいとされており、メラニンをもった毛母細胞がターゲットになると考えられています。
 また、いずれの段階でも、毛根の幹細胞は侵されず、回復の可能性は常に存在しています。

 脱毛巣内では、INF-γ、IL-2、IL-1βなどのTh1型のサイトカインが増加し、INF-γは毛包のICAM-1やHLA-DR発現を促し、IL-1βは毛成長を抑制すると推測されています。
 また、毛包にはHLA-DR陽性細胞や、ICAM-1が発現しますが、小泉氏らはCD1が毛嚢上皮内に90%認めていることから、ランゲルハンス細胞を介する細胞性免疫機序が関与しているのではないかと推測しています。

 一方、血清中に毛組織抽出蛋白に対するIgG自己抗体が高率に証明されますが、その自己抗体はおそらく成長期毛器官の毛皮質細胞や毛包に存在する毛器官特異的な44/46KDのケラチン蛋白であると報告され、液性の自己免疫現象も関与している可能性も考えられています。

 以上のことから、本症の脱毛機序は、成長期毛器官の毛球に対するTリンパ球による自己免疫説が有力ですが、その標的自己抗原はなお不明です。
 ただし、血中に抗毛ケラチン自己抗体が証明され、発症には種々の内的外的要因が考えられています。
 また、精神的ストレスが本症の原因に関与しているとされていますが、精神的ストレスによってT細胞系機能が変化することが知られています。
 
 最近のトピックスによれば、マウスにストレスを加えると、皮膚末梢神経からサブスタンスP(神経伝達物質)が分泌され、毛包周囲のマクロファージの活性化と肥満細胞の脱顆粒が起こることが報告されています。これらの細胞から放出されるTNF-αやIL1-βが成長期の毛包に上述の変化を起こすことになるわけで、これによってストレスと脱毛との関係が伺われるわけであります。


参考文献

1).難治性円形脱毛症106例における臨床検査結果と治療効果
小泉 麻奈ほか 日皮会誌:108(13),1881〜1891,1998

2).円形脱毛症の臨床と病態
伊藤 雅章 MB Derma,23:1〜7,1999

3).円形脱毛症治療におけるエバスチンの有用性
義澤 雄介ほか 日皮会誌:115 (10),1473〜1480,2005

4).皮膚疾患、最新の進歩:2005〜2006 ・・・ 円形脱毛症
Arck PC et al : Am J Pathol 162 ; 803, 2003

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