「にきび」外用療法の新生面
NO.174 2011/1/30

皮膚常在菌と「にきび」

 ヒトの皮膚表面には無数の微生物、細菌、真菌、およびウイルスなどが存在しています。
 なかでも、グラム陽性球菌である表皮ブドウ球菌や、コアグラ−ゼ陰性ブドウ球菌 (CNS)、グラム陽性桿菌であるコリネバクテリウム属、グラム陽性嫌気性桿菌であるアクネ桿菌などをあげることができます。
 これらは、平素無害ですが、特別な場合に病気の原因になることがあります。
 この中、表皮ブドウ球菌は好気性で毛包内腔の浅いところから皮表にかけて、アクネ桿菌はやや嫌気性で毛漏斗部(毛包〜脂腺導管内部の深部)に棲息しています。とくに後者は脂漏部位に多く分布して思春期に増加し、次のようなメカニズムで「もきび」の発生に関与していることがわかりました。即ち

1)皮脂の主成分であるトリグリセライドがこのアクネ桿菌のリパーゼにより遊離脂肪酸に分解される。
2)遊離脂肪酸による毛嚢上皮の異常角化。
3)毛漏斗部の管腔の狭窄による皮脂の毛漏斗部内貯留。
4)貯留した皮脂と毛漏斗部の角化による角質の毛漏斗部内での停滞による面皰形成。
5)また、アクネ桿菌そのものも好中球走化性因子をだし、遊走してきた好中球は活性酸素をだして、炎症性アクネの病変を惹起する。

 更に、真菌に由来するマラセチア菌が同様皮膚表面に分布しており、マラセチア菌も皮脂を好み、そのリパーゼが皮脂を分解してその際発生する遊離脂肪酸が毛包壁を刺激して角化を促し、炎症を惹起することも分かってきました。
 そこで、これまで「にきび」の発生原因にはアクネ桿菌しか考えていませんでしたが、マラセチアの関与も考えて外用剤を選ぶこことも必要です。

最近使用されている「にきび」外用薬とその効果

1.ナジフロキサシンクリーム(アクアチムクリーム)
 1993年9月販売開始
 ナジフロキサシンは新キノロン系合成抗菌剤であり、ブドウ球菌属、アクネ菌に対し殺菌的な抗菌力を示しますが、ナジフロキサシンを有効成分とするアクアチム製剤は世界で初めての新キノロン系外用薬です。
 抗菌作用のほか、サイトカインや活性酸素という炎症性ファクターの抑制など、多面的な作用が報告されており、抗アンドロゲン作用のあることも報告されています。

2.リン酸クリンダマイシン(ダラシンTゲル)
 2002年9月販売開始
 リンコマイシン系の抗生物質で、細菌のたんぱく質合成を阻害することにより抗菌力を発揮します。 また、抗菌作用のみならず、炎症性サイトカインに対する抗炎症効果のある薬剤です。ジェル状のもの故、べとつかずサラッとしています。

3.ケトコナゾールクリーム(ニゾラールクリーム)
 1993年12月販売開始
 「にきび」の発生には、前述のように、アクネ桿菌の他にマラセチアの関与も考えられますので、外用真菌剤であるケトコナゾールクリームを併用することにより、アクアチムクリーム単独よりすぐれた効果が期待できます。

4.ディフェリンゲル(アダバレン)
 2008年10月販売開始
  〜「国内初のレチノイド様作用を有する外用尋常性ざ瘡治療剤〜
 表皮のレチノイン酸受容体に結合し、表皮角化細胞の分化を抑制します。
 角化が抑えられることで、ニキビの前段階の微小面皰と非炎症性皮疹(黒ニキビ、白ニキビ)ができにくくなり、その結果として、後段階の炎症性皮疹 (赤ニキビ)の減少にもつながります。使用:1日1回就寝前使用

外用剤の併用について

 上述の如く、アクネ桿菌に対する抗菌薬と、マラセチア菌に対する抗真菌薬(ニゾラールクリーム)との併用が考えられる他に、アダバレンとの併用が考えられます。
 アダバレンにはレチノイド受容体に対する作用があり、毛包漏斗部の角化を正常化する効果があります。
 外用抗菌薬とアダバレンの併用によって、毛包内にある薬剤が移行しやすい環境を整えることが可能であると推測されます。アダバレンは面皰形成の改善作用と抗炎症作用を有していますので、併用により面皰と炎症性皮疹の両者に対する効果が期待されます。 
 アクアチムローションとアダバレンゲルの併用例として、アクアチムローションを朝夕1日2回、アダバレンゲルを夕1回外用したところ、2週間後には炎症性皮疹の著名な減少が認められたという報告があります。

 No.9 「にきび」の治療 (2001/9/26)
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