当クリニックにおける低出力レーザー治療の現状
NO.175 2011/12/11
1.レーザーの医学的応用

 レーザー光線は特定の波長を有し、電気エネルギーを直接光エネルギーに転換するので効率が高く、その強度によって、細胞の生存閾値をこえた不可逆な反応(光生物学的破壊反応)と、細胞の生存域値内での可逆的な反応(光生物学的活性化反応)の2つが起こります。そして、前者による治療を高反応レベルレーザー治療、後者による治療を低反応レベルレーザー治療と呼んでいます。
 また、レーザーは放出するエネルギーの大小によって高出力ないし低出力レーザーに分けられます。
・高出力レーザーは、高熱を発生するのでホットレーザーとも呼ばれ、医学的にはとくに切開、気化蒸散、止血、凝固など、外科手術に使われます。
・低出力レーザーは、温熱効果よりも、むしろ光化学効果をもたらすもので、後でこの医学的応用について述べてみたいと思いますが、フランスを中心にして使用されているソフトレーザーは、組織にやさしいレーザーといったイメージの優美な呼び名です。

2.とくに低出力レーザーの効果と作用機序

 1962年になってガリウム・アルミニウム(Ga‐Al)半導体が著しく高い効率で発光することがわかり、同年10月にはIBM,GE、MITといった米国のトップレベルの研究所から半導体レーザー発振の成功が発表されました。
 半導体レーザーの特徴は、励起電流が少なくて発振し、素材の結晶の碧開面(結晶の割れやすく決まった面)が反射鏡の役目を果たしますので、特別に共振器を組み込む必要がなく、レーザー器は小型化されています。
 一般にレーザーを含めた光の生体組織における透過率、吸収率、反射率はその波長によって違いますが、Hardyは波長550nm(可視光線)から2400nm(近紫外線)について、皮膚の透過スペクトルを報告しています。 それによれば700から1200nm(0.7〜1.2μm)の波長帯が高い透過率を示しています。830nmの波長をもつGaAlAs半導体レーザー光は、この波長帯に含まれ、透過性に優れ、より深部にまで作用を及ぼすことができます。
 1968年、ハンガリーのMesterによって低出力レーザーに臨床的に自然治癒力を高める生体活性効果のあることが発見されて以来、半導体レーザーはこの目的のため、とくに整形外科領域、ならびに麻酔科領域で応用されてきました。
 また、1985年渥美氏は数mW〜100mWの出力を持つレーザーを低エネルギーレーザーと定め、低エネルギーレーザーによる医学応用を治療、診断、リハビリテーション、その他の4つに分類しました。
 次に、レーザーの効果と、とくに低出力レーザーの作用機序についてこれまでの文献をまとめてみました。




3.皮膚科領域における低出力レーザーの応用

 低出力レーザーの効能・効果は主として筋肉・関節の慢性非感染性の炎症による疼痛の緩和にあり、外科・整形外科領域・或いは麻酔科領域でよく使用されてきました。
 皮膚科領域におきましても、帯状疱疹をはじめとして、これまでの文献に発表されたものを挙げると次のように色々なものを挙げることができます。
・結節性痒疹 ・・・ 森田秀樹(図鑑 半導体レーザーと痛みの治療,1996年改訂新版)
・アトピー性皮膚炎 ・・・ 森田秀樹(同上)
・尋常性白斑 ・・・ 余 幸司(MB Derma,35:13‐18,2000)

4.当クリニックにおける低出力レーザー治療の現状

 当クリニックでは下記のように半導体レーザー治療器による治療を10年以上前にはじめ、既に「わがクリニックにおける光線療法−とくにソフトレーザーにかける夢」と題して皮膚病診療:17(9);901〜911,1995で紹介しました。
 いま、その現状をお知らせしますと、次のようになります。




 上述のレーザー治療器使用上の経緯から、最近は専らメディレーザーソフト1000を使用していますが、いずれも一点15〜30秒を基準に照射することにしています

 ‖咯疱疹の治療に於いて重要なポイントをしめている。
 帯状疱疹に対する本来の治療法(ノイロトロピン注射、抗ウイルス製剤、鎮痛消炎剤の内服)に併用するもので、この場合出来るだけ圧痛点を探し、神経痛が止まるまで照射することにしています。通常1週間に1〜2回照射することを原則としています。

◆/蚕畊眦戮碧性病巣、とくに慢性痒疹、結節性痒疹 
 このように浸潤の強い皮疹は、ステロイド軟膏をいくら頻回に塗っても中々軽快しませんが、上記の照射条件で大体一週一回の照射を繰り返すことにしています。
  次にその一例を示しますと、
 80才女性で頑固な結節性痒疹(両下腿)の症例で、痒みが強く、注射、内服を続けながら、いくらステロイド軟膏を塗布しても軽快しなかったので、この時点ではメディレーザーソフト150を使用していましたが、大体1週1回、一点30秒ずつの照射を併用したところ、約5ヶ月して図のように殆んど治癒しました。




 円形脱毛症に対して
 1977年に中国ではじめられた、所謂“レーザー鍼”の理論を応用して、発毛に関する頭の『ツボ』である、百絵、天中を中心にレーザー照射を行っています。 
[症例]32歳 男性:多発性円形脱毛症(アトピー鑑別試験陽性・IgE 1230)
・ノイロトロピン・ヒスタグロビン皮下注射による非特異的減感作療法に、 
・セファランチン+アレグラ内服と、
・トプシムローション外用を併用しながら、メディレーザーソフト1000mWのソフトレーザーを1〜2週に1回、発毛のツボである百絵、天中に一点15秒ずつ照射を続けたところ、治療後3ヶ月位で一部に軟毛の発育をみ、治療後8カ月で発毛は著明となり、表面的には一応正常に近くなりました。

ぁヾ荼任「にきび」の外用療法における補助療法の一つとして
 当クリニックにおける「にきび」治療の新方針:
・ビタミンB2・B6製剤の静脈注射を1〜2週に1回して経過をみ、
・ロキシスロマイシン1日1回150啼睇投与、また必要に応じてプレグナンジオールを併用することあり。
・外用剤:抗アンドロゲン作用のあるナジフロキサシンクリーム(アクアチム・クリーム)に外用真菌剤であるケトコナゾールクリーム(二ゾラ―ル・クリーム)を併用。
 そして最後に 「にきび」治療の有力な光線療法として、頑固な「にきび」の硬結に対して一点15〜30秒ずつの照射を繰り返すと、症状は著しく軽快することを経験しています。

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