鳴海クリニック <消化器内科・内科・外科・皮膚科>

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尋常性乾癬 の新しい治療法
NO.177 2012/2/12

乾癬治療の歴史 

 1808年Robert Willanによってはじめて独立した疾患として記載されたもので、真の病因は不明ですが、異なった幾つかの遺伝子によって支配される言わば体質的なものに、色々な環境因子が加わって発症するものと考えられています。
 境界のはっきりした紅斑の上に、厚い銀白色のか痂皮をつける皮膚病で、とくに治療を施さなくとも自然に消長をくりかえし、自然消退は20%~30%~38.5%に見られると言います。 完全に治癒することは例外的で少なく、多くは再発を繰り返すものとされています。しかし、生命に対する危険性は少なく、この点では予後はいいと思われています。
 昔から色々な治療が行われてきましたが、この治療の世界的な流れについてみますと、次のように挙げることができます。

1808年: Robert Willanによってはじめて独立した疾患として記載された。

1925年: ゲッケルマン療法(コールタール軟膏塗布・太陽灯照射併用療法)
 Goeckermanが1925年にはじめた療法で、わが国では小堀が1951年に紹介以来広く使用されるようになった。

1950年代より:ステロイド外用療法 

1955年: メソトレキセート(免疫抑制薬)が乾癬の治療にはじめて用いられた。
 その後、欧米では広く使用され、1974年には米国皮膚科医の50%がこれを用いたという。

1974年: PUVA療法 がフィッツパトリックによって発表された。
 光増感物質(オキソラレンなど)と長波紫外線(UVA)による光化学療法。
 その変法として外用PUVA即時照射法(8‐MOP外用液塗布後直ちにブラックライトを照射する方法)などがある。

1978年: レチノイド(ビタミンA誘導体)治療成績の報告。
 1985年、わが国でも発表され、乾癬治療薬の一つとなる。

1979年: シクロスポリン(免疫抑制薬)療法 
 Muellerらによって乾癬に対する有効性が報告された。

1987年: ビオチン療法(ビタミンH)牧野氏のまとめ 
 1976年血液透析治療を受けていた慢性腎不全の患者で、偶々合併していた乾癬の皮疹が急速に消退したという報告以来、乾癬の治療に血液透析が試みられ、有効例が次々に報告された。
 牧野らは透析患者の血中アミノ酸組成が健常者と著しく異なり、乾癬患者ではセリンその他のアミノ酸が有意に上昇し、このセリン代謝に関与するビタミン類のうち、ビオチンの濃度が極度に低いので、ビオチンを1日9mg服用させると、2ヶ月以上で約10%が治癒、略治。1/4が著効という成績をあげている。

1988年: 乾癬に対するリザベンの臨床効果(リザベン乾癬研究班)
 とくに痒みの強い症例に有効で、その作用はケミカルメディエーターの遊離・抑制にあるとされている。

1990年: 液体窒素凍結療法について
 乾癬に対する液体窒素凍結療法について2,3の報告がみらるが、その作用機序は「逆ケブナー」によるものと考えられている。一般に、尋常性乾癬ではケブナー現象は陽性で、外傷をはじめ外からの刺激で乾癬の皮疹が生ずるのが普通であるが、外傷によって乾癬皮疹が消失する場合もあり、これを逆ケブナー現象といっている。  
 この場合、凍結という外傷による乾癬皮疹の消失はこの逆ケブナー現象によるものではないかとされている。

1991年: ニコチン酸ニセリトロール(ぺリシット)の臨床効果 
 臨床検査所見で血清脂質に異常が認められる場合に有効のようである。

1993年: ビタミンD3外用療法が乾癬に対する治療法の一つになった。
 近年ビタミンD3の活性体がカルシウム代謝調節ホルモンとしての働きをもっている以外に、ビタミンD3レセプターを介して細胞の増殖抑制および分化誘導作用を有することが明らかにされ、とくに乾癬に対して有効であることが報告されてた。
 本邦において使用される製剤には次のようなものがある。
 ①タカシトロール(ボンアルファ)
 ②カルシポトリオール(ドボネックス)
 ③マキサカルシトール(オキサロール) 

1995年: アゼラスチン(アゼプチン)の効果(今村氏らによる)
 リザベン同様ケミカルメディエーター、サイトカインの遊離抑制の関与が大きいものと推察されている。 

 以上、乾癬の治療について色々述べましたが、一般に、乾癬の治療に際しては、まず病状をよく把握して治療法を振り分けることは勿論ですが、個々の患者さんの性、年齢、全身状態、社会的・家庭的環境など、患者さんの個別性(Individuality)を考え、全人的治療に局所療法を加味して行うよう、努力したいものです。

尋常性乾癬の新しい治療法を求めて

 以上 乾癬の治療発展の歴史について述べましたが、最近とくに著しい免疫組織学の成果をもとに、尋常性乾癬の新しい治療法を考えてみたいと思います。

※ 乾癬の病因と最近の考え方

 乾癬は鱗屑を伴った慢性の炎症性角化症であり、組織学的に表皮細胞の過増殖・分化異常、血管新生、活性化T細胞の表皮/真皮への浸潤と、表皮内への多核白血球の浸潤、とくに角層への好中球の浸潤を特徴とする疾患です。その病態は、活性化T細胞を主体とした炎症細胞が乾癬皮疹の成立により重要な役割を果たしており、乾癬の皮疹部では、表皮細胞およびT細胞を主体とする炎症細胞から産生される種々のサイトカインが複雑に絡み合い、お互いを刺激しつつ、乾癬皮疹形成に関与しているのではないかと考えられています。

 つまり、尋常性乾癬では皮膚の最外層の表皮の代謝サイクルが短くなり、角化細胞が鱗屑となって剥がれ落ちます。これに炎症が加わり皮膚は赤く盛り上がってきます。正常な表皮は45日サイクルですが、乾癬の場合は4~5日と極めて短く、新陳代謝が病的に亢進した状態になっています。乾癬を起こす原因は明らかではありませんが、遺伝的な要因を有する患者さんが外部から何らかの要因が加わり、免疫異常が生じ炎症が起きることが判ってきました。
 最近、このような炎症を起こす物質がいくつか判明してきましたが、その中でTNF-αと呼ばれる生体内物質の役割が注目されています。TNF-αは乾癬の病巣部に多量に存在し、それ自体が炎症を引き起こしたり、炎症を起こす別のサイトカイン産生を促したりしています。このTNF-αを阻害する画期的な新しい生物学的製剤が今年の1月に承認されました。

※ 内服療法について

・ 塩酸エピナスチンの効果

 尋常性乾癬はTh1病の代表疾患であり、Th2の集積、つまりアレルギーに関わる反応とは相反するものと考えられています。
 そこで、T細胞に対するケラチノサイト由来のケモカインに着目し、塩酸エピナスチンの影響を検討した結果、塩酸エピナスチンは培養ケラチノサイトのTh1ケモカイン産生、免疫担当細胞表面分子の発現を抑制することが明らかとなりました。
 塩酸エピナスチンはTh1細胞が表皮に向かって遊走し、活性化するのを抑制することが可能であり、同薬は尋常性乾癬においてTh1細胞の浸潤という乾癬の病態そのものを抑える効果が期待できます。 
アレジオン(1994年6月販売開始)

・塩酸オロパタジンの効果

 以前は、乾癬患者に「かゆみ」を伴なうことは少なかったのですが、近年、罹患率が皮膚科外来の約2%を占めるという報告もあり、「かゆみ」を伴なう患者が増加傾向にあり、最近の報告では乾癬患者の半数以上が「かゆみ」を訴えていると言われています
 最近のBritish Journal of Dermatology (2003; 149: 718-730)に、尋常性乾癬と「かゆみ」との関係について書かれた論文が載っていますが、これによりますと、乾癬患者では、「かゆみ」を訴える症例にサブスタンスPが増えていることが明瞭に示されています。
 塩酸オロパタジンは抗ヒスタミン作用に加え、IL-8の産生・遊離抑制作用、および神経ペプチド遊離抑止作用を有する薬剤です。
 野見山 朋彦氏は、尋常性乾癬における塩酸オロパタジンの長期内服による臨床効果を検討しております(アレルギーの臨床 23-10, 2003)が、皮膚症状の改善率は塩酸オロパタジンの内服日数が増すにつれて増加し、内服2週後には34、5%、内服終了時には81.6%としています。
 また、増谷氏ら及び吉川氏らは尋常性乾癬患者の皮膚症状に対する改善率を、塩酸エピナスチン内服で夫々21.2%及び64.5%と報告しています。
アレロック(2001年3月販売開始)

※ 外用療法について・・・とくに活性型ビタミンD3外用薬の効果

 一方、ビタミンD3外用療法が、最近における乾癬の新しい治療法の主流となっていますが、近年、D3の活性体がカルシウム代謝調節ホルモンとしての働きをもっている以外に、ビタミンD3受容体を介して細胞の増殖抑制、および分化誘導作用を有することが明らかにされ、これがとくに尋常性乾癬に対して有効であることが報告されています。
 ビタミンD3には表皮細胞増殖抑制効果、表皮細胞分化促進作用に加え、表皮細胞からのインターロイキン(IL-1)やIL-6/8などのサイトカイン産生抑制、IL‐1刺激によるT細胞の増殖抑制・免疫グロブリン産生抑制、T細胞からのIL‐2、6産生抑制、多核白血球の遊走抑制などの炎症細胞に対する効果も知られています。

※ 治療の実際 ・・・ とくに内服と外用の併用について

 上述のことから、実際の治療に際して、内服療法と外用療法を併用して効果をあげることが期待されますが、群馬大学医学部の安部正敏先生らは「尋常性乾癬に対する高濃度活性型ビタミンD3外用療法における塩酸エピナスチン内服の併用効果」について既に発表しております。
 これによりますと、活性型ビタミンD3単独外用療法で皮疹が改善しない例でも、塩酸エピナスチン内服を追加することにより、半数の症例で皮疹の改善が得られたということです。
 そして、尋常性乾癬の治療において、塩酸エピナスチンは、高濃度活性型ビタミンD3外用療法の補助療法として明らかに有用であるとし、両剤は乾癬治療において比較的安全性の高い薬剤の組み合わせであり、瘙痒を有する尋常性乾癬に対して試みる価値のあるcombination therapy であると述べています。

 今 わたしの手元に、以上の内服療法の症例、および内服と外用を併用して治療した症例が何例かありますが、その実例を次に示したいと思います。


※ 尋常性乾癬・治療の実際
 

・初期の治療 (その1)
 ビオチン散にペリシットとリザベンを併用して効果をみた。



・最近の治療 (その2)
 ビオチン散にアレロックとアレジオンを併用して効果をみた。



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