皮膚外用剤の混合使用について
NO.117 2005/3/30

 わたしは既に、このホームページの No.24・軟膏療法の基本(2002/1/16)、No.25・軟膏療法の問題点(2002/1/23)、No.88・皮膚病変に応じた外用療法(2004/3/21)、No.112・保湿剤を如何に使うか(2005/1/15) において軟膏療法の基本的事項についてお話しました。
 これは皮膚科医を志して東京逓信病院皮膚科に入局し、今は亡き恩師小堀辰治先生から新しい軟膏療法についてみっちり指導を受け(当時の宮崎薬局長にも一方ならぬお世話になりましたが)、その後赴任した群馬大学で、山碕教授よりクラシックな軟膏療法の手ほどきを受けたことと相俟って、これらがミックスされて現在に至っています。
 従ってわたしの軟膏療法は、既に50年以上にわたる長い間の体験に基づくものです。

 
 2000年2月に実施された江藤氏のアンケート調査によりますと、外用剤を希釈、混合して使用している医師の比率は85%とされていますが、その主な理由を次のように掲げています。
 1).コンプライアンスの向上・・・これが最も多くて32%
 2).ステロイド外用剤の副作用を軽減する目的・・・26%
 3).保湿剤などの混合による相加・相乗効果の期待・・・18.5%

 そして、これら皮膚外用剤を混合使用する混合、基剤の不一致が一番問題であることがアンケート調査の結果からも明らかであり、基剤について十分に理解することが大切であると述べ、今後は基礎研究ばかりでなく臨床での使用成績を蓄積することにより、科学的根拠に基づく外用剤の混合・希釈の適正化を図ることが大切であると述べています。
(以上、日皮会誌:114、2080〜2087、2004 並びにBM .Derma ,91:12〜16、2004参照)

外用剤混合に際しての留意点

1)外用剤使用の原則を守ること
 一般に、外用剤は、薬物の性状や適応疾患、使用部位を考慮して基剤を選択し、製造されていますから、本来は単独で使用すべきです。
 しかし、必要に迫られて混合して使用する場合、同じ性質の基剤同士を選択すべきであると思います。
 油脂性基剤に乳剤性基剤のものを混合すると、時間がたつにつれて水分が蒸発し、基剤の性質が変化し、使用に際して最適の条件ではなくなります。また、乳剤性基剤は混合により乳化が破壊され、薬物の浸透性が変化するとされています。
 とくに保湿剤とステロイド剤の混合に際し、実際に処方されている組み合わせの多くは、ステロイドの濃度は希釈されるものの、ステロイドの浸透性が高まるとされるものが多く、逆に副作用が増加する可能性のあることが認められています。

2)ただ単に塗りやすいとか、使用感の良さを目的に処方した軟膏を、指示通りに外用して貰えると言う患者のコンプライアンスを少しでも向上せんがための安易な混合はいましめなくてはなりません。高齢の患者さんが多くなり、病気や治療に関するお話をしても、中々充分に理解が得られず、コンプライアンスが低下する傾向にありますが、あくまでも、理論に立脚した軟膏の使い方の工夫が大切で、病気や投薬に際しての適確な説明と患者のコンプライアンス(服薬遵守)がかみ合ってはじめて医療効果が発揮されるわけであります。

当クリニックにおける外用剤混合の実際

 当クリニックでは、開業以来、湿疹類の治療とくにその急性症状に対して、水溶性軟膏基剤のレスタミン亜鉛華マクロゴール軟膏(当クリニック独自の処方)に同じく水溶性基剤のステロイド軟膏(例えばトプシムクリームなど)を使用時に半々を混合し、これを局所に厚く塗布して経過をみ、必要に応じて他の外用剤に切り換えるなどして効果をあげています。

 また、ひどい水虫をはやく治そうと思って、30年以上前からハイアラージン軟膏を塗布した上に、別の抗白癬菌剤油性軟膏(トリコマイシン軟膏)とステロイド油性軟膏(フルコートF)を混合した製剤(トリコマイシンF)を一時併用して著効を奏してきましたが、トリコマイシンが製造中止となってマイコスタチンに変更、更にこれもなくなり、最近ではハクセリンを混合したものを併用して効果をあげています。

とくに調剤薬局との密接な連携
 当クリニックは昭和55年1月以来院外処方箋を発行していますが、これを機会に近くに開設された調剤薬局との緊密な連携のもと、とくに有能な薬剤師の力をかりて、自信をもって処方箋を発行しています。 当クリニック独自の外用薬の調製、とくに外用薬の混合に関しましては、調剤学的にもきびしいアドバイスに従って実施しています。
 こうすることが本当に患者さんのためであり、安易に患者さんのコンプライアンスを満足させることが、必ずしも患者さんのためにはならないと思う次第であります。

コンプライアンス (Compliance) とは
 もともと、コンプライアンスという言葉は「要求・期待に応える」といった意味をもっていますが、最近では、この言葉の意味は広がりをもち、企業に対して法令(法規範)に限らず、広く社会の「きまり」を遵守することが求められるようになりました。 医療面ではコンプライアンスのことを 「服薬規定の遵守」、または 「服薬遵守」という意味で使われています。

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