円形脱毛症における抗アレルギー剤の有用性
NO.138 2005/11/20

 円形脱毛症と抗アレルギーの効果に関しては既に次の3つの文献がみられます。
● 円形脱毛症の病勢におよぼす抗アレルギー剤の影響(皮膚:36,60〜68・1994)
● アゼラスチンの影響(西日皮膚:57巻6号,1206〜1211・1995)
● 円形脱毛症におけるエバスチンの有用性(日皮会誌:115(10),1473〜1480,2005)
 わたしは1988年12月20日から1989年9月14日にかけて、セルテクトを投与して著効が得られた本症症例を経験しましたので、これを次に述べてみたいと思います。

セルテクトが著効を奏した症例

 39歳男性、初診の2週間前から頭部に「かゆみ」を訴え、洗髪したところ頭髪が急に抜けたという。
初診時の所見:頭部に不規則で広汎な脱毛巣あり、残りの頭髪も非常に抜けやすい。
  血圧; 112〜70 ・・・ 血液像;好酸球8% ・・・ IgE;755 u / ml
初診後10日間で頭髪は殆んど抜けてしまった。同時に頭がズキンズキンして、強い肩凝りを訴える。

治療方針
注射;ノイロトロピン特号3ccの静注(1週1回)
内服;下記の如し
外用;トプシムローション塗布
紫外線照射

ビタミンE(50mg)6T+γオリザノール(25mg) 3T内服
 1月以上服用するも変りなく、肩凝りも中々治らない。この時点でセルテクト1日2Tの内服に切りかえる。

セルテクト2T内服
約1週間で頭重感、 肩凝りは直り、約3週間で発毛がみられるようになった。2ヶ月位で発毛更に著明になったが、頭頂部には脱毛斑が不完全脱毛状態として残る。

セルテクト2T+ビタミンE(50mg)6T+γオリザノール(25mg)
 この頃より少しいらいらすると言うので、再びビタミンEとγオリザノールを併用することにした。
 その後、後頭部にV字型に発毛傾向が認められ、これはセルテクト内服開始後3ヶ月で更に著しく、最後まで残った頭頂部も発毛著明となり、約7ヶ月で殆んど正常に近い状態まで頭髪が再生した。
 その後は外用剤アロビックスのみで1か月経過をみたが、治癒状態が続いている。

円形脱毛症と抗アレルギー剤

 義澤氏らはエバスチン投与3ヶ月で発毛を認めた症例について次のように述べています。
 エバスチン投与前の患者の末梢血好酸球、血清IgE値、および血清IL-4値がエバスチンの有用性に影響を及ぼすかどうかを検討していますが、発毛を認めた14例と認められなかった9例との間に有意の差は認められなかったと言っています。
 ただ、これらの検査値が、エバスチン投与前と投与3ヶ月後についてどのように変動するかを観察したところ、発毛を認めた14例では、好酸球数とIL-4値に明らかな変化を認めなかったが、IgE値はエバスチン投与前と比べて3ヵ月後には有意に低下したと言っています。一方、発毛を認めなかった9例では、いずれも有意な変化を認めなかったと言っています。
 そして、このエバスチンの有用性とともに、オキサトミドによる抗アレルギーやDNCBによるTh1反応刺激作用が円形脱毛症に有用であることは、円形脱毛症がTh2反応優位な疾患であることを推察させるとしています。

 さらに、円形脱毛症におけるヒスタグロビンとノイロトロピンの使用についてですが、籏持氏らは難治性の円形脱毛症28例に対して、ヒスタグロビン・ノイロトロピン併用療法を施行して、28例中15例(54%)に有効であったとしています。
 ヒスタミン加ヒト免疫グロブリン製剤であるヒスタグロビンと鎮痛・鎮静・抗アレルギー剤であるノイロトロピンの併用療法に関しましては、慢性の湿疹・皮膚炎群・特にアトピー性皮膚炎に対する有効性が報告されていますが、ノイロトロピンの発毛効果も考慮し、その効果をみたわけですが、アトピー性皮膚炎を伴なった症例では75%と高い有効性を示し、伴なわなかった症例では38%とその有効性に有意差のあったことは注目すべきこととしています。(西日皮膚・54巻4号・1992 参照)
 
 なお、ヒスタグロビンとノイロトロピンの併用療法に関しましては、このホームページのNo.49 慢性蕁麻疹に対する非特異的減感作療法の効果(2002/7/10)、No.90 抗アレルギー薬と、使い方の実際(2004/4/11)、No.96 ノイロトロピンの有用性について(2004/6/11) をご参照ください。

本症の治療に対するわたしの考え方

 本症の一例についての治験は上述のとおりですが、本症の治療について、私は次のような考え方で治療をしております。

診察にさいして
 この病気の診察にあたって大切なことは、問診や検査によってアトピーの有無を確認したり、血圧を測ったり、頭重感・肩凝りの有無を確めたるなど、色々な検査が必要です。

治療について
 とくにアレルギーのある場合には抗アレルギー剤を中心とした治療が必要になりますが、抗アレルギー剤では何を選択すればいいか、考えてみたいと思います。
 いろいろな抗アレルギー剤の中でとくに注目すべきものに 塩酸オロパタジン製剤(アレロック)があります。

 本症の原因の一つに精神的ストレスがあげられますが、先のホームページでもお話しましたように、精神的ストレスによってT細胞系機能が変化することが知られておりますし、この場合サブスタンスPはストレスにより誘発される様々な行動や神経科学的反応にも関与しており、抗不安剤や抗うつ剤によってサブスタンスPの生合成の低下が引き起こされるという報告もあります。
 
 最近開発された塩酸オロパタジン製剤(アレロック)には、従来の抗アレルギー作用(ヒスタミンH1受容体拮抗作用、ヒスタミン遊離抑制作用)の他、このサブスタンスP遊離抑制作用のあることがわかってきました。このことを再認識して、治療に応用する必要があると思います。
 
 一方、前述のようにヒスタグロビンとノイロトロピンの併用療法も必要と思われますし、局所療法としては副腎皮質ホルモンの含まれたロータションは勿論ですが、理学療法として、冷凍療法(クライオン・スプレーなど)、ソフトレーザー療法(局所照射並びにツボ刺激療法)を好んで用いています。

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