爪の異常について考える
NO.158 2007/2/18

爪にみられる色々な変化(爪病変の表れ方)
 

 次に示すように、爪には種々の形態変化や色調の変化、更に爪郭部および爪周囲の変化がみられます。

1.形態変化
匙状爪(spoon nail)・・・鉄欠乏性貧血 
時計ガラス爪またはヒポクラテス爪・・・慢性肺疾患、先天性心疾患、甲状腺機能亢進症その他
爪甲剥離症・・・甲状腺機能亢進症
横溝ないし横線 ソ沈ないし縦溝 δ濤壇西凹窩 
爪萎縮、爪甲脱落症・・・爪の栄養異常
無爪甲、矮 爪・・・爪の形成異常

2.色調の変化
黒ないし褐色の爪・・・アジソン病、ヘモクロマトージス、種々の薬剤の沈着
黄色の爪・・・Yellow-nail 症候群
白色の爪・・・低アルブミン血症
緑色の爪・・・緑膿菌感染症
皮下出血による色調の変化
爪半月の色調の変化・・・心疾患、ウイルソン病、銀皮症、種々の薬剤の沈着

3.爪質の変化
厚硬爪甲・・・先天性厚硬爪甲
爪甲軟化症 D濤虫贏松鼻´つ濤箪栂症 ツ濤蛋愍分裂症

4.爪郭部および爪周囲皮膚の変化
・爪囲に炎症がある場合は、炎症の程度、持続期間に応じて起こる爪甲の変化。
・爪囲の湿疹が爪組織に波及して生じた爪の形態的変化
 爪床に限局した湿疹・皮膚炎により爪甲異常をきたすことがある
 爪郭部の湿疹は利き手の第1〜3指に症状が強い。
・爪周囲よりも爪床に強い影響が考えられる場合、爪甲は茶褐色〜黄色調を帯びて白濁する。
・その他、いぼ、血管拡張性肉芽腫、カンジダ性爪囲炎、細菌性爪囲炎、爪甲下膿瘍、爪甲下角質増殖などの変化

※ 爪の混濁、肥厚、脆弱 (爪が白く濁って厚くなり、脆くなる)・・・爪白癬の場合 によくみられる変化

爪病変の原因について

爪病変を一応爪に限局した変化、皮膚疾患に伴う爪変化、全身性疾患に伴う爪変化と分けて考え、原因の上からも次の3つに分けて考えることができます。  

1.炎症性変化 (乾癬、扁平苔癬 )
2.栄養障害 (外傷、特発性)
3.感染症 (ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症)

※ 爪病変は次に示すような全身疾患に伴ってみられ、その診断や治療に役立つ

‐嘆輯鐚栖機↓⊇朶調鐚栖機↓8撞朶鐚栖機↓た媼栖機◆´ゴ亮栖
Ψ豈媼栖機◆´内分泌疾患、代謝異常、 栄養障害、脳・神経疾患
膠原病、  薬剤による爪障害 

例えば
・腸疾患を有する患者の爪を見ると脆弱化していることがあり、
・胃潰瘍患者の爪下にはしばしば線状出血が認められる。
・先天性心疾患や肺癌では時計ガラス爪が、
・肝硬変では白い爪が、
・アジソン病、ヘモクロマトーシス、あるいは薬疹では黒い爪が、
・慢性の低アルブミン血症では爪半月に平行に走る1〜2本の白帯が
・皮膚筋炎やSLEでは爪郭の毛細管拡張による爪囲紅斑が特徴的。
・貧血になると爪床が蒼白となり、爪半月が消失し、線状出血が出現するとともに爪の成長が遅延する。
・低色素性貧血では匙状爪が手指のみならず足趾にみられる。  
 
※ 真菌感染症、とくに爪白癬について



※ 物理的原因による爪疾患

物理的な原因による爪疾患の代表的なものを次に述べましょう。

陥入爪
爪甲が両側縁に向かって深く彎曲し、側爪郭にくい込み、爪郭部を損傷する状態を陥入爪(ingrown nail) といいます。10歳代の女性に多く、主として第1趾爪に生じます。
原因としては、窮屈な、先の細い靴による圧迫、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の循環障害、外傷による爪母や爪床の障害、爪白癬による爪甲の変形、不適当な爪切り(深爪)などが挙げられます。
爪甲のかどが爪郭にくい込むと、圧迫によって痛みを生じ、さらに爪郭の表皮を穿孔すると、二次的に浮腫、炎症を起し、さらに感染を生ずると発赤、腫脹が増し、化膿性肉芽腫となり、肉芽組織が爪甲の上に形成され、強い痛みを訴えるようになります。

挟み爪(過彎曲爪)
爪甲が過度に内方に彎曲し、爪床部組織に食い込むか、爪床部組織を挟むようになった状態をいい、俗に巻き爪ともいって、一応陥入爪と区別する場合もあります。



爪病変の起こり方

1.爪甲の発育を抑制するような刺激が爪母、一部爪床に加わって生ずる
正常な爪甲は3つの異なった部位から発生しますが、原因の加わった部位によって、
臨床像に違いが出てきます。
すなわち、爪母の近位部(a)がおかされると爪甲縦列症、粗糙な爪、縦線、および不規則な爪甲点状凹窩が生じ、 爪母の近位部と遠位部(aおよびb)が罹患すると爪甲の菲薄化、爪甲萎縮、爪甲脱落を生じます。また、爪甲の菲薄に伴う爪床表皮の増殖や匙状爪もこの部分の障害と思われます。



※ とくに乾癬患者にみられる爪病変の起こり方

・爪母近位部の病変・・・爪甲表面に点状陥凹、横溝、爪甲白斑(表面の粗糙化による)
・爪母遠位部の病変・・・爪甲白斑、爪甲剥離
・爪母全体の病変・・・・爪甲の変形、脱落
・爪床、爪下皮の病変・・油滴状爪、爪甲剥離

2. 爪母の栄養障害と、その原因

一般に、梢循環障害、末梢神経障害、全身的な代謝障害などを根底に爪母に栄養障害的変化をもたらす場合、以下に述べる色々な疾患や原因が考えられます。

1)twenty nail dystrophy
小児に発症する手足の全爪甲に栄養障害性変化がみられる疾患で、基礎疾患がなく、
原因は不明ですが、爪に限局した湿疹反応が想定されています。
2)化学物質  
酸、アルカリなどの化学物質による障害は爪甲にも強い影響を与える。
3)円形脱毛症 
円形脱毛症では爪甲の変化を伴うことがあり、点状陥凹がしばしば観察される。
爪母の障害が強くなると、さまざまな形で栄養障害性変化を来たし、横溝、縦の線、粗糙化、萎縮などがみられる。爪の表面は光沢を失う。
4)乾癬
円形脱毛症と同様に点状陥凹、爪甲の粗糙化、横溝、縦の線、爪甲下点状出欠などの変化をみる。
5)扁平苔癬
扁平苔癬の爪の変化は10%にみられる。その皮膚病変に伴ってみられるもので、爪のみに生ずるのはきわめて少ないし、その診断は困難である。 
後爪郭の病変では紫紅色調を呈し、縦の線や横溝をみる。次第に菲薄化し、脆くなる。爪甲の表面は雲母状に剥がれてくる。さらに病変が進むと、爪母での爪甲の形成が傷害され、翼状爪を形成し、さらに萎縮から脱落をきたすようになる。
6)その他 

3.爪郭部および爪周囲組織の病変 
  〜とくに爪の形態異常と湿疹性変化について〜
 
・爪囲の湿疹が爪組織に波及することによって爪の形態に変化が生じる。
・爪母の湿疹性病変を反映して、爪甲表面の粗糙化、凹凸不整、先端の層状剥離などの軽度の栄養障害性変化がしばしば認められる。 
・爪床に限局した湿疹・皮膚炎により爪甲異常をきたす。
・爪郭部の湿疹は利き手の第1〜3指に症状が強い。
・爪周囲よりも爪床に強く影響が及ぶ場合は、爪甲は茶褐色〜黄色調を帯びて白濁し、爪甲剥離を生じる。(爪床の変化は主としてマニキュアなどの爪の化粧品により生じる)

参考文献

1.西山茂夫;爪疾患カラーアトラス   南江堂 1993年 
2.東 禹彦 編集企画 爪診断・治療・実践 マニュアル MB Derma. No.13 1998年
3.勝岡憲生・宮地良樹・瀧川雅洪;
 皮膚科診療プラクティス 8 毛と爪のオフィスダーマトロジー 文光堂 1999年

Back