中高年のスキンケアを考える
NO.167 2008/4/17
とくに中高年の「しみ」・・・脂漏性角化症のスキンケア

皮膚常在微生物、とくにマラセチアについて

 ヒトの皮膚表面には無数の微生物、細菌、真菌、およびウイルスなどが存在しています。
 皮膚常在菌として知られているマラセチア菌は癜風(クロナマズ)の原因菌として知られている脂好性の真菌ですが、一般に、過労やストレス、睡眠不足、過食、抗生剤、ステロイド剤の使用等によって皮脂の分泌が増加し、それに伴ってマラセチアも増加するとされています。
 そして、このマラセチアのリパーゼが皮脂を分解して遊離脂肪酸を生成し、これが炎症を惹起するものと考えられています。
 また、表皮細胞にも直接作用し、炎症物質や角化因子を分泌する力の強いことが明らかになっています。(表皮細胞由来のサイトカイン、ケモカイン、補体の活性化)

脂漏性角化症とマラセチア

 脂漏性角化症とは、一般に中高年者にみられ、加齢変化と考えられている疣状の良性上皮性腫瘍で、表面がやや脂っぽくみえるものが多いことから、この名があるようです。
 病因は不明ですが、遅発性の表皮母斑とみなす説もあります。

 脂漏性角化症の症例をよく診ていますと、顔面の皮膚はどちらかと言えばやや脂漏状態に近く、とくに鼻唇溝を中心にやや発赤があります。このような症状は脂漏性湿疹のそれに近い状態です。

 脂漏性湿疹は、顔面(とくに外耳道を含む耳及びその周り、鼻唇溝)や腋窩、陰股部など、皮脂線の多い、いわゆる脂漏部位に見られる皮膚炎で、境界鮮明な紅斑と落屑、痂皮を主症状としています。その病因として、皮脂分泌の異常、真菌や細菌の増殖、ビタミンB2・B6の欠乏など、さまざまな原因が考えられていますが、最近では、脂好性の真菌であるマラセチアによる感染説が有力です。即ち、このマラセチアのリパーゼが皮脂を分解して遊離脂肪酸を生成し、これが病変を起こすものとされています。

 また、これは最近知ったことですが、野間等の研究(脂漏性角化症と脂腺母斑におけるマラセチア腐正−西日皮膚・60巻2号・1998)よって、脂漏性角化症とくに角化型脂漏性角化症の病理組織像で、マラセチアの群正像が指摘されています。そして、一般に、微生物が土壌、水、動物の死体や植物の有機物を栄養として生息している状態を腐生(菌)と呼んでいますが、皮膚病変の発生病理に関与することなく、偶然検出される程度に増殖した状態を腐生(真菌)と呼んでもいいのではないかとしています。

 何れにしましても、脂漏性角化症はマラセチアと何らかの関わりがあると判断して、ケトコナゾールの使用を考えた次第です。

ケトコナゾールの作用

 ケトコナゾールはマラセチアに対して強力な抗真菌作用を有していますが、マラセチアのリパーゼの働きを抑えることにより、治療効果が発揮されるわけです。
 また、ケトコナゾールにマイルドな抗炎症作用のあることが動物実験の結果から示唆されています。 更に、抗アンドロゲン作用のあることも知られており、成長期毛を増加させるとともに、皮脂産生を低下させることが指摘されています。

  ・抗真菌作用
  ・抗炎症作用
  ・抗アンドロゲン作用

 わたしは、かねてより、脂漏性角化症の治療にヒルドイド軟膏を長期間外用させてかなりの効果をあげていますが、これにケトコナゾールの製剤であるニゾラ―ルローションを併用して更にその効果を深めることはできないか、わたし自身の体験に数10例の症例を重ねて検討していますが、顔の皮膚がしっとりして滑らかになるなど、ヒルドイド軟膏単独よりも一層優れた効果が期待出来ることがわかりました。

当クリニックにおける脂漏性角化症のスキンケアの実際

 中高年の「しみ」、とくに脂漏性角化症の治療は程度によって異なり、非常に目立つものに対しては液体窒素による冷凍手術やレーザー治療がその対象になりますが、その後療法及び軽度のものに対しては下記のようにしております。

 第一に、ニゾラールローションを顔の脂漏部位を中心に乳液代りに塗ること。
 第二に、その上からヒルドイド軟膏を栄養クリーム代りに塗ること。
  
 以上を1日2回、少なくとも2,3か月から1年以上にわたって気長に塗り続けることが必要です。

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